『三太郎物語』
№ 1
その日三太郎は学校に行くのが嫌だった。
いや 正確には恐かったのだ。
それは前日に悪童連中に嘘をついたからである・・・・
クラスの悪童達は クラスメートの女の子の話をしていた。
「あの子が可愛いぞ」「いやあの子の方が良い」「でもあいつは馬鹿だぞ」「馬鹿でも美人がいい」「でも話をしてて面白くないぞ」云々・・・・
他愛も無い話であったが そのうち誰が好きか という話に変わっていった。
三太郎は何時も蚊帳の外で後ろの物語方で聞いているだけであったが その日は違っていた。
めいめい好きな相手を言い合った。
そして誰と誰が交際してるかとの話に及んだ。
突然の事であった「ところで三助(皆は三助とか三公とか呼んでいた)は誰が好きなんだ、勿論付き合っているんだろうなー」
彼にはそんな相手など居ようはずがなかった。
何時も眩しそうに遠くから眺めている女の子は居たが・・・・
美人で頭の良い清美ちゃんだったが 彼女はそれに気付いてはいない。
併し彼はつい言ってしまった。
「俺だって居るさ」「誰だそんな物好きは」「清美ちゃんだよぅ」皆大笑いした。
そして「その証拠をみせろ、ラブレターでも貰ったんか?」と・・・・
「見せてみろよ ラブレターを」
時の勢いである、三太郎は「明日見せてやるよ」と言ってしまったのである。
それは日頃馬鹿にされ続けてパシリをされていた彼等への反抗心から出てしまった言葉ではあるが その時には後の事など頭に無かったのだった。
№ 2
ここで三太郎がクラスでどう思われていたのか書いて置こう。
身長は低く 決して男ぶりはどうひいき目に見ても良いとは云えない。
勉強は下の下、頭も良くない。
普通なら苛めの対象になりかねない存在なのだが 不思議なひょうきんさを持ち合わせていた。
そして誰にも従う。
だから 教室の便利屋の様な存在で 苛めの対象にはならなかったのである。
幾ら馬鹿にされてもヘラヘラ笑ってる。
女生徒達にも馬鹿にされ・・・・でも憎まれない得な男であった。
しかし今度はそうは行かない。
きっと苛められるだろう、いや絶対に殴られるに違いない。
学校に行くのを止そうか・・・・でも家まで迎えに来られたらどうしよう・・・・
三太郎は学校が好きであった。
家では父親がすぐ怒る、愚図の三太郎には学校は一種の逃げ場所でもあったのだ。
小さな町工場を経営してた父親は三太郎の性格が歯がゆかった。
何とか跡継ぎとして逞しく育って欲しい と願っていたのだ。
だが彼は叱られるとすぐメソメソと泣く。
このまま消えてしまいたいとも思った。
が、考えてみると何処にも逃げ場はない。
彼は意を決して学校に向かった。
№ 3
校門の前で優等生の宮本が待っていた、そしてそっと彼に手紙を渡した。
「これを持って行け」と・・・・
教室に入った途端悪ガキ共に囲まれた。
彼は宮本から受け取った手紙を大事そうに鞄から取り出し 彼らに渡した。
その手紙には「三ちゃん好きよ、清美」と唯それだけが書かれてあったのだ。
葵の印籠宜しく それは彼等の彼を見る目が変わったのは確かである。
宮本の代筆に他ならないが 全ての悪ガキを黙らせるには充分であった。
宮本は日頃からお人好しの馬鹿の三太郎に,つい仏心を出したのであるが・・・・
三太郎は舞い上がってしまったのである。
「清美ちゃんは俺を好いてくれている」
とんだ勘違いを犯したものだ。
それからの三太郎は金魚の糞の如く清美の後を付いて歩く 訳の判らない清美はそれが気持ち悪くて堪らない。
親友の綾子に相談した。
綾子は男勝りの気性で悪ガキ達にも一目置かれている。
彼女は三太郎を校舎の隅に呼び出し一括した。
彼は偽のラブレターを取り出し 綾子に殴られた頬をさすりながら「清美ちゃんは俺に手紙をくれたんだ」
頭の回転の速い綾子はすぐ宮本の悪戯と感じた。
烈火の如く怒った綾子はすぐ宮本を問い詰めた。
事の顛末を知った綾子はひとつのアイデアを思いついた。
帰宅部(何処も部活をしていない)の三太郎を自分の属してる新聞部に入れて鍛えてあげようと、そこには清美も居る。
嘘から誠・・・もしかしたら三太郎は清美と仲良くなれるかも・・・・・
底抜けの大馬鹿者と校内きっての美女・・・・
案外いけるカップルになるかも・・・
茶目っ気が湧いてきた。
これは綾子のちょっとした病気でもあるが・・・・
№ 4
まだ偽ラブレターとは知らない三太郎は 清美と会える事で有頂天になった。
清美はどうも三太郎が疎ましくて堪らない。
綾子の提案で渋々入部を認めたのだが・・・・
使い走りには丁度良いか と・・・・の思いも働いて。
三太郎は嬉々として働いた。
しかし必要以上の口をきいてくれない清美に、彼は「この人は口数の少ない人だなー」と単純に考えていたのである。
清美と三太郎の仲はたちまち皆の知るところとなったのだが清美は面白くない。
一方三太郎は・・・・言うに及ばずである。
学校が楽しくて堪らなかった。
しかし偽ラブレターの件はふとした清美の愚痴で知られてしまったのである。
三太郎は悪ガキ達に呼び出された。
「よくも俺達を騙してくれたな!ヤキを入れてやるから覚悟しろ!」
殴られ蹴られボロボロにされた三太郎はそれでもまだ気が付かなかった。
ラブレターは清美が書いてくれたと信じて疑わなかったのだ。
鼻血を出し顔中にアザを作りながら新聞部の部室に入って行った。
清美は「気持ち悪い」と逃げ出してしまったが、綾子は医務室に連れて行き怪我の手当てをしたのである。
「馬鹿だねー殴られる前に此処に逃げて来ればいいのに」「私が助けてあげるのに」
しかし彼にも弱いながらも意地があった。
綾子にだけは助けて欲しくなかったのだ。
何でも綾子の後ろには恐いお兄さんが付いてると云う話を聞いていたから・・・・
だが実際は只綾子の家の職業が運送業である為 厳つい男達が多かっただけの事であったが・・・・
それからの三太郎は彼等の格好の苛めの対象となってしまった。
№ 5
それからの三太郎は事有るごとに 連日の様に彼等悪ガキ連中に殴られ蹴られした。
次第にひょうきんな笑顔も消え教室でもメソメソとする日が多くなった。
そんな姿を見兼ねて綾子は心を痛めた。
宮本が綾子に言った「綾の通う空手道場に連れて行ったらどうだ?」
しかし綾子は何をやってもドジで運動オンチの三太郎には無理だろうと思った。
かと云って何時も守ってやれる訳でなし・・・・
ここは宮本の言うように道場に連れて行くしか方法は無いか、と心に決めたのである。
思った通り三太郎は準備運動の段階から根をあげた。
師範の竹刀の音を聞いただけでおどおどしてベソをかく始末・・・・・
「これは駄目だ・・・」師範が呟いた。
仕方なく道場の掃除をさせる事にした。
三太郎は喜んだ、これなら叱られる心配はない。
意外にも彼は几帳面な性格で隅から隅まで綺麗に拭きあげて行く。
師範は「こんなところから慣れさせるか」と彼の入門を許した。
彼の父親は非常に喜んだ。
「やっと少し男らしくなってきたか」と・・・・・
毎日道衣を担いで家を出てゆく姿に逞しくなった姿を想像して・・・・
だが三太郎は明けても暮れても掃除、洗濯に追われていた。
型を少し習ったが腰がふらついて一向に上達しない。
師範は仕方なく綾子に指導を任せる事にしたのだ。
今度は綾子が自分の練習時間が取られる事に腹を立てた。
しかし顔には出さず根気よく指導を重ねた。
周囲の努力も空しく彼は一向に上達しない。
学校では相変わらず苛めは続いた。
だが三太郎は「空手に先手なし」と 馬鹿の一つ覚えで殴られ続けた。
しかし以前の様に泣くことは少なくなった。
それは空手の効果かもしれない。
№ 6
何時も苛められながら彼は考えた。
「どうして僕だけが殴られるんだろう?」
まだ最初の原因がラブレター事件だとは気付いていない彼には理解できなかったのである。
彼は綾子の強さが欲しかった。
しかしまるで運動オンチの三太郎には無理な事である。
又 宮本の様な秀才にも憧れた。
相変わらず清美には冷たくあしらわれていた。
だが三太郎にとって彼女はビーナスなのだ。
唯一緒にいるだけで楽しかった。
近くで働いているだけで自分が特別の存在に感じていたのだ。
体育祭が近ずいてきた。
クラス全員が何かの種目に出場しなければならない。
三太郎は一番簡単だと思った100メートル走に出る事にした。
これだと一番出場する時間が少ない。
後はフィナーレ直前の騎馬戦だ。
これは皆の後ろを付いて走ってれば目立たない。
いよいよその日がやって来た。
100メートル走には宮本も出る。
彼は文武両道 スポーツも得意であった。
競技が始まった。
三太郎は必死に走る 走る走る・・・・ビリで走った。
皆ははるか彼方に遠ざかって行く。
ハプニングは半分ほど走った辺りで起こった。
集団の数人がぶつかり合って倒れたのである。
皆起き上がって走り出したが一人足を捻挫したらしく起き上がらない。
三太郎はそれを追い越して振り向いた。
まだ痛そうに足を押さえてうずくまっている。
三太郎は走るのを止めてその生徒に掛け戻った。
そして抱え上げ必死にゴールを目指した。
トップでゴールした宮本も掛けて来た。
そして三人揃ってゴールしたのだった。
見物してた人々から拍手が巻き起こった。
ビリではあるが感動の黄金のゴールであった。
第一章完
№ 1
その日三太郎は学校に行くのが嫌だった。
いや 正確には恐かったのだ。
それは前日に悪童連中に嘘をついたからである・・・・
クラスの悪童達は クラスメートの女の子の話をしていた。
「あの子が可愛いぞ」「いやあの子の方が良い」「でもあいつは馬鹿だぞ」「馬鹿でも美人がいい」「でも話をしてて面白くないぞ」云々・・・・
他愛も無い話であったが そのうち誰が好きか という話に変わっていった。
三太郎は何時も蚊帳の外で後ろの物語方で聞いているだけであったが その日は違っていた。
めいめい好きな相手を言い合った。
そして誰と誰が交際してるかとの話に及んだ。
突然の事であった「ところで三助(皆は三助とか三公とか呼んでいた)は誰が好きなんだ、勿論付き合っているんだろうなー」
彼にはそんな相手など居ようはずがなかった。
何時も眩しそうに遠くから眺めている女の子は居たが・・・・
美人で頭の良い清美ちゃんだったが 彼女はそれに気付いてはいない。
併し彼はつい言ってしまった。
「俺だって居るさ」「誰だそんな物好きは」「清美ちゃんだよぅ」皆大笑いした。
そして「その証拠をみせろ、ラブレターでも貰ったんか?」と・・・・
「見せてみろよ ラブレターを」
時の勢いである、三太郎は「明日見せてやるよ」と言ってしまったのである。
それは日頃馬鹿にされ続けてパシリをされていた彼等への反抗心から出てしまった言葉ではあるが その時には後の事など頭に無かったのだった。
№ 2
ここで三太郎がクラスでどう思われていたのか書いて置こう。
身長は低く 決して男ぶりはどうひいき目に見ても良いとは云えない。
勉強は下の下、頭も良くない。
普通なら苛めの対象になりかねない存在なのだが 不思議なひょうきんさを持ち合わせていた。
そして誰にも従う。
だから 教室の便利屋の様な存在で 苛めの対象にはならなかったのである。
幾ら馬鹿にされてもヘラヘラ笑ってる。
女生徒達にも馬鹿にされ・・・・でも憎まれない得な男であった。
しかし今度はそうは行かない。
きっと苛められるだろう、いや絶対に殴られるに違いない。
学校に行くのを止そうか・・・・でも家まで迎えに来られたらどうしよう・・・・
三太郎は学校が好きであった。
家では父親がすぐ怒る、愚図の三太郎には学校は一種の逃げ場所でもあったのだ。
小さな町工場を経営してた父親は三太郎の性格が歯がゆかった。
何とか跡継ぎとして逞しく育って欲しい と願っていたのだ。
だが彼は叱られるとすぐメソメソと泣く。
このまま消えてしまいたいとも思った。
が、考えてみると何処にも逃げ場はない。
彼は意を決して学校に向かった。
№ 3
校門の前で優等生の宮本が待っていた、そしてそっと彼に手紙を渡した。
「これを持って行け」と・・・・
教室に入った途端悪ガキ共に囲まれた。
彼は宮本から受け取った手紙を大事そうに鞄から取り出し 彼らに渡した。
その手紙には「三ちゃん好きよ、清美」と唯それだけが書かれてあったのだ。
葵の印籠宜しく それは彼等の彼を見る目が変わったのは確かである。
宮本の代筆に他ならないが 全ての悪ガキを黙らせるには充分であった。
宮本は日頃からお人好しの馬鹿の三太郎に,つい仏心を出したのであるが・・・・
三太郎は舞い上がってしまったのである。
「清美ちゃんは俺を好いてくれている」
とんだ勘違いを犯したものだ。
それからの三太郎は金魚の糞の如く清美の後を付いて歩く 訳の判らない清美はそれが気持ち悪くて堪らない。
親友の綾子に相談した。
綾子は男勝りの気性で悪ガキ達にも一目置かれている。
彼女は三太郎を校舎の隅に呼び出し一括した。
彼は偽のラブレターを取り出し 綾子に殴られた頬をさすりながら「清美ちゃんは俺に手紙をくれたんだ」
頭の回転の速い綾子はすぐ宮本の悪戯と感じた。
烈火の如く怒った綾子はすぐ宮本を問い詰めた。
事の顛末を知った綾子はひとつのアイデアを思いついた。
帰宅部(何処も部活をしていない)の三太郎を自分の属してる新聞部に入れて鍛えてあげようと、そこには清美も居る。
嘘から誠・・・もしかしたら三太郎は清美と仲良くなれるかも・・・・・
底抜けの大馬鹿者と校内きっての美女・・・・
案外いけるカップルになるかも・・・
茶目っ気が湧いてきた。
これは綾子のちょっとした病気でもあるが・・・・
№ 4
まだ偽ラブレターとは知らない三太郎は 清美と会える事で有頂天になった。
清美はどうも三太郎が疎ましくて堪らない。
綾子の提案で渋々入部を認めたのだが・・・・
使い走りには丁度良いか と・・・・の思いも働いて。
三太郎は嬉々として働いた。
しかし必要以上の口をきいてくれない清美に、彼は「この人は口数の少ない人だなー」と単純に考えていたのである。
清美と三太郎の仲はたちまち皆の知るところとなったのだが清美は面白くない。
一方三太郎は・・・・言うに及ばずである。
学校が楽しくて堪らなかった。
しかし偽ラブレターの件はふとした清美の愚痴で知られてしまったのである。
三太郎は悪ガキ達に呼び出された。
「よくも俺達を騙してくれたな!ヤキを入れてやるから覚悟しろ!」
殴られ蹴られボロボロにされた三太郎はそれでもまだ気が付かなかった。
ラブレターは清美が書いてくれたと信じて疑わなかったのだ。
鼻血を出し顔中にアザを作りながら新聞部の部室に入って行った。
清美は「気持ち悪い」と逃げ出してしまったが、綾子は医務室に連れて行き怪我の手当てをしたのである。
「馬鹿だねー殴られる前に此処に逃げて来ればいいのに」「私が助けてあげるのに」
しかし彼にも弱いながらも意地があった。
綾子にだけは助けて欲しくなかったのだ。
何でも綾子の後ろには恐いお兄さんが付いてると云う話を聞いていたから・・・・
だが実際は只綾子の家の職業が運送業である為 厳つい男達が多かっただけの事であったが・・・・
それからの三太郎は彼等の格好の苛めの対象となってしまった。
№ 5
それからの三太郎は事有るごとに 連日の様に彼等悪ガキ連中に殴られ蹴られした。
次第にひょうきんな笑顔も消え教室でもメソメソとする日が多くなった。
そんな姿を見兼ねて綾子は心を痛めた。
宮本が綾子に言った「綾の通う空手道場に連れて行ったらどうだ?」
しかし綾子は何をやってもドジで運動オンチの三太郎には無理だろうと思った。
かと云って何時も守ってやれる訳でなし・・・・
ここは宮本の言うように道場に連れて行くしか方法は無いか、と心に決めたのである。
思った通り三太郎は準備運動の段階から根をあげた。
師範の竹刀の音を聞いただけでおどおどしてベソをかく始末・・・・・
「これは駄目だ・・・」師範が呟いた。
仕方なく道場の掃除をさせる事にした。
三太郎は喜んだ、これなら叱られる心配はない。
意外にも彼は几帳面な性格で隅から隅まで綺麗に拭きあげて行く。
師範は「こんなところから慣れさせるか」と彼の入門を許した。
彼の父親は非常に喜んだ。
「やっと少し男らしくなってきたか」と・・・・・
毎日道衣を担いで家を出てゆく姿に逞しくなった姿を想像して・・・・
だが三太郎は明けても暮れても掃除、洗濯に追われていた。
型を少し習ったが腰がふらついて一向に上達しない。
師範は仕方なく綾子に指導を任せる事にしたのだ。
今度は綾子が自分の練習時間が取られる事に腹を立てた。
しかし顔には出さず根気よく指導を重ねた。
周囲の努力も空しく彼は一向に上達しない。
学校では相変わらず苛めは続いた。
だが三太郎は「空手に先手なし」と 馬鹿の一つ覚えで殴られ続けた。
しかし以前の様に泣くことは少なくなった。
それは空手の効果かもしれない。
№ 6
何時も苛められながら彼は考えた。
「どうして僕だけが殴られるんだろう?」
まだ最初の原因がラブレター事件だとは気付いていない彼には理解できなかったのである。
彼は綾子の強さが欲しかった。
しかしまるで運動オンチの三太郎には無理な事である。
又 宮本の様な秀才にも憧れた。
相変わらず清美には冷たくあしらわれていた。
だが三太郎にとって彼女はビーナスなのだ。
唯一緒にいるだけで楽しかった。
近くで働いているだけで自分が特別の存在に感じていたのだ。
体育祭が近ずいてきた。
クラス全員が何かの種目に出場しなければならない。
三太郎は一番簡単だと思った100メートル走に出る事にした。
これだと一番出場する時間が少ない。
後はフィナーレ直前の騎馬戦だ。
これは皆の後ろを付いて走ってれば目立たない。
いよいよその日がやって来た。
100メートル走には宮本も出る。
彼は文武両道 スポーツも得意であった。
競技が始まった。
三太郎は必死に走る 走る走る・・・・ビリで走った。
皆ははるか彼方に遠ざかって行く。
ハプニングは半分ほど走った辺りで起こった。
集団の数人がぶつかり合って倒れたのである。
皆起き上がって走り出したが一人足を捻挫したらしく起き上がらない。
三太郎はそれを追い越して振り向いた。
まだ痛そうに足を押さえてうずくまっている。
三太郎は走るのを止めてその生徒に掛け戻った。
そして抱え上げ必死にゴールを目指した。
トップでゴールした宮本も掛けて来た。
そして三人揃ってゴールしたのだった。
見物してた人々から拍手が巻き起こった。
ビリではあるが感動の黄金のゴールであった。
第一章完
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